PRYT養成コース 修了生インタビュー(戸田香織さん)

IAYT認定トレーニングであるフェニックス・ライジング・ヨガセラピー(PRYT)の養成コースは、1年という長い時間をかけて行われます。どんなタイミングで受講を決めたのか、実際に受講してどうだったのか、2016年に開催されたPRYT養成コースの修了生である、戸田香織さんにお話を聞かせていただきました。

養成コースの受講を決めた背景

PRYTの養成コースの受講を決めたのは、香織さんの人生においてどのようなタイミングでしたか?
仕事や家庭を持ちながら、ヨガ教師としても活動し、自分でもヨガを実践してきましたが、どこかでまだ「生きづらい」と感じている自分がいました。「そのままの自分」で伸び伸びと生きていない気がしたのです。このモヤモヤした感じは、自分の中から来ていると思っていましたが、どう確かめればよいのか、また、確かめたところで、どうやって変えていけるのかは分からず、突破口を探していました。
そんな時に受講したPRYTの一般コースで、自分にとって腑に落ちる体験があり、「このワークを通して、自分の抱えていることが開けていくかも」という期待が生まれました。養成コースは「プロフェッショナルになるためのコース」だと言われたので悩みましたが、最終的には「プロになる/ならない」という以前に、自分の生き方と向き合うために必要なプログラムだと感じて、選びました。

腑に落ちる体験がきかっけになって、養成コースを選択されたんですね。その体験について、もう少し聞かせてください。
一般コースでは、参加者同士がクライアント役とプラクティショナー役になって、1対1のセッションの練習を行うのですが、それは私にとって、日常生活での人との関わり方を擬似体験するような時間でした。
プラクティショナーからの問いかけに対して、言葉を口に出せない自分や、正しく答えようとしている自分など、人と関わる時のリアルな自分の姿が見えたんです。生きづらさの根っこは、人との関わり方にあると思っていたので、このワークは突破口になると感じました。
また、PRYTのセッションでは、身体感覚にフォーカスして、気づきを促すだけでなく、その気づきをもとに、日常で何ができるか、何をしたいかを探るところまで落とし込んでいく点がいいと思いました。

私は、日本ヨーガ療法学会の認定するヨーガ療法士の資格も持っているのですが、ヨーガ療法とPRYTには、「身体感覚に意識を向ける」という共通点がある一方で、そのアプローチには大きな違いもあります。例えば、PRYTでは、プラクティショナーがクライアントに直接触れたり、セッション中にコミュニケーションをとったりと、リアルに関わるところに特徴があります。私は、人に触るのも、触られるのも苦手なのですが、そこに自分のテーマがあると思っていたので、リアルな関わりを通して現実的な行動プランを持ち帰ることができるこのワークに、可能性や面白さを感じたのだと思います。

養成コースでの学びと自分自身の変化

1年間に渡る養成コースのなかで、何が香織さんにとって一番意味のあることでしたか?
「正解を教えてもらえない」ということです。課題を提出しても、「これでいいですよ」と言ってもらえなくて、最初はただ苦しかったことを覚えています。だから人のテクニックを真似していたのですが、そのうち人の真似をしても、形だけに過ぎないと気づきました。本当に大切なのは、自分がクライアントとどう向き合うかで、それは自分の中で見つけるものだと気づいたのです。
それからは、「どうしたら自分の中にすでにあるものを生かせるか」がテーマになりました。当初、苦手なことを克服するのも一つだと思って、自分にダメ出しをしていた時は、相手のダメに見えるところに意識が向いてしまって、それを受け入れられない自分がいました。けれど、自分ができることをフルに生かそうとした時は、相手がどんな状況にあっても受け止められるようになっていました。自分のあり方を意図的に変えられるようになったことは、大きな変化でした。

プラクティショナーとして意図をもつことで、相手を受け止められるようになったんですね。同じような気づきや変化は、香織さんの日常でもありましたか?
私は親の介護をしているのですが、時に受け入れがたいことに直面します。そんな時に「しょうがないよね」と受け止められるようになりました。プラクティショナーの経験を通して、「自分が整っていれば、起きている状況に巻き込まれない」ことが体験的に分かるようになっていたからです。目の前で起きていることに、自分の判断基準や期待を持ち込まず、リアルに起きていることを確認することからスタートできるようになりました。
以前は「相手を救いたい、よくしたい」と先回りしていましたが、今は相手に寄り添いながら、何ができるかを考えるようになりました。PRYTでは、プラクティショナーがクライアントの気づきのプロセスに介入しようとしてしまったら、その瞬間からセッションはクライアント自身のものではなくなってしまいます。そうしたプラクティショナーとしてのあり方が、日常にも自然に出てきているなあと感じます。

このコースを受けたことで、香織さんのプロフェッショナルとしての仕事にも、変化が起きましたか?
自分の意図を明確にするようになったことで、仕事にブレがなくなりました。仕事上、いろんな人と関わるので、当然ながら様々な感情も湧いてきます。以前はそれに左右されて、自分のエネルギーを消耗していたように思います。今は湧いてくる感情を認めながらも、自分の意図に立ち返ることで、振り回されなくなりました。自分が何をしたいのか、何度も問い直すことで、物事のエッセンスを見極める力も身についてきたように思います。

修了生としてのメッセージと現在の活動

この養成コースをどのような方に勧めたいですか?
私のように、日常生活や仕事の中で「生きづらい」と感じている方がいたら、養成コースの前に、まず個人セッションを受けてみてほしいです。特に、人との関係が確立できないという悩みがあれば、自分は人とどう関わっているのかを見れる貴重な場となるはずです。そこで自分が何を感じるのか、また自分に起こっていることに気がつけるのかを体験してみてもらいたいです。できたら、繰り返し受けることをお勧めします。
養成コースは「もう一歩踏み出したい」「変わりたい」という気持ちや覚悟があるのであれば、チャレンジする甲斐のあるプログラムです。養成コースこそがPRYTの本番で、本当に自分と向き合い、人と向き合う大切なレッスンがはじまる場だと思います。

現在、認定セラピストとして、主に50代以上の方に対象に活動されていますが、その経緯や思いについて聞かせていただけますか?
自分が50歳前後の頃、心身が不安定で、とても苦しい時期でした。年をとったことを自覚するとともに、老いへの不安を抱えていて、自分自身に起きている現実をショックとともに受け入れながら、同時に親も支えなくてはいけない時期だったからです。そんな時、PRYTで学んだ「人を助ける時は、まず自分を整える」ということがとても役立ちました。
歳を重ねると、変化することへの怖さから、体も心も固くなりがちです。また、年齢とともに、変えられることも少なくなります。それでも、今の自分や変化を受け入れ、自分自身にやさしくなることで、ものの見方や人との関わり方も変わり、自然と状況も変化する可能性があるのだと知りました。
だからこそ、同世代の同じように苦しんでいる人の力になれたらと思っています。自分をもっと大切にしたいと思っている人、現状に満足していない人に、ぜひこのワークを試してもらいたいと願っています。

プロフィール紹介

戸田香織
フェニックス・ライジング・ヨガセラピー公認セラピスト
クリパルセンター公認ヨガ教師
日本ヨーガ療法学会認定 ヨーガ療法士

30歳半ば、うつ病の寛解期にヨガに出会う。自身の会社を経営しながらヨガを継続し、ヨガプラクティショナー、ヨガセラピストとしての資格を取得。
現在は、80歳を超え認知能力の衰えている母親の生活サポートや介護をしながら、自身の経験と資格を活かし、同じ境遇にある「介護や人間関係に悩みを抱える50代以降のシニア世代」「介護に携わる人全般(プロの方々も含む)」に向けたヨガクラスやセラピーを定期的に開催している。
https://50sup-yogatherapy.com

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